昔の名前で出ています2011/07/25 12:54

約30年前に同人誌活動していた者たちが久しぶりに飲み会で集って、ノリでブログ立ち上げようということで、とりあえずやってみました。
30年前の感性はどこへやら、いまじゃファンタジィなんて書けないかもだけど、昔の仲間としゃべくりできるのは楽しいと思うのよね。
皆さんの書き込みお待ちしています。
私はブログ初心者なのでトラックバックとかチンプンカンプンだけど、おいおい勉強していきますのでよろしくお願いします。
あいさつ文だけでは面白くないので近況報告を

去年の11月に愛猫しし丸くんが急病で昇天してから半年、喪明けということで新人が我が家にやってきました。


どうです このだらしないかっこ。生後約3ヶ月の♂
名前はふく丸。顔が覆面かぶったみたいな白黒のぶちなので覆面丸を短くして覆丸、転じて福丸、ふく丸にしました。性格は物怖じせず、なんにでも興味津々。掃除機もドライヤーも怖がりません。今ではクラッシャーの異名をとるほどに。家のものがだんだんとズタボロになって行きます…
でも前のしし丸がおとなしい性格でつんとすましたやつだったので、かまってかまってと寄ってくるのがかわいくておもろいです。
上の写真はひとしきり暴れたあと、電池切れの状態で充電中です。それにしてももう少しましなカッコで寝てほしい…

では皆さん、書き込みお待ちしています。
とりあえず、何の方向性も持たず立ち上げたのでどうなるかは不明。みんなでおいおい考えて行きましょうか。
でも、○っちゃん、○ょうがまず書きたいのは、「○よし、サイテー」でしょうか…

いろいろやってんだけど…2011/07/26 17:22

なんかいろいろやってんだけど、いまいち思うようにならんなこのブログ。エディターの使い勝手が悪いのか、使ってるほうの頭が悪いのか(たぶん後者の方)…
まだわからんことだらけでなれてない所為だろうけど、なんかイライラするわ。

ま、それはさておき、茜さん早速のコメントありがとうございます。
もともと創作集団ですから小説おおいに結構です。
えーと、とりあえずこのブログを自由にみんなに使ってもらうには、みんなにこのアサブロ(アサヒネットブログサービス)にログインしていただいて記事を勝手に書いてもらうということでよろしいでしょうか?
ほんで、いろいろやってもらって使い方教えてもらえればこっちは楽やし(なんと横着な)
ログインIDとパスワードはメールでお送りしますわ。

あ、あとアクセスカウンターってどうやって設置すんの?もしそれもやってもらえるんやったらありがたい。

「○よしサイテー」は、我がろうそくが誇るチャキチャキ娘?らが、ろうそくブログが立ち上がったら第一話はそれやなという話しでして、「同窓会みたい」に来ていた時の話しであります。これは後日チャキチャキ娘?のどちらかが書いてくれるんでないかと…
もし早よ知りたかったらまたメールででも。

昔のメンバー誰か連絡つく人あったらこのブログのこと知らせてください。

小説(黒猫のタンゴ)2011/07/27 11:28

小説

津々井 茜

「黒猫のタンゴ」


昨日はごめんな、ってさりげなく言おうか。今夜も幸生とふたりっきりで公園を歩いているのだから、言うべきなのだろうか。冷静に考えれば、昨夜の幸生との口論は俺が悪かった。

頭では肯定しているのに、感情が拒絶反応を起こして詫びるのはいやだと言う。だからおまえは……と乾さんの声までが聞こえてきそうになっていたら、別の声が実際に聞こえてきた。

「赤ん坊の声?」
「猫だよ」

 即座に反応した幸生が駆け出していく。いつだったか、なぜだか幸生が泣いたあとの顔をしてスタジオにやってきた。どうしたんだよ? と尋ねたら、猫が死んじゃったんだ、と応じた。あのときは美江子さんも泣き顔をしていて、ふたりで拾った猫が交通事故で死んだのだと教えてくれた。

 猫が死んだからっていい年して泣かなくてもいいだろ、と言いたかったのだが、ペットロス症候群とやらいうものもあるのだそうで、猫好きには大事件だったのだろう。

 そんな事件もあったので、幸生が大の猫好きなのは知っている。今夜も猫か。しかし、猫がどうしたんだろ、と考えながら、駆け出していった幸生を見ていた。俺には赤ん坊の声に聞こえたのは、猫の悲鳴だったらしい。高校生と思しきカップルが、小型の猫でキャッチボールをして遊んでいるのだった。

「やめろやめろっ! 猫をおもちゃにするなっ!!」
 悲痛な声を上げて駆け寄った幸生が、女の子の腕にキャッチされた猫を奪い取った。

「俺だってガキのころにはさ、猫で遊んだりもしたけど、そこまではしなかったよ。そんなことしたら、猫の内臓が破裂しちゃうだろ。まだ子猫なのに。きみらの猫?」
「野良だよ。あんた、誰?」
 女の子が不服そうに言い、男の子も言った。

「野良猫の親子がいてさ、ちびが五匹くらいいて、そいつらは逃げてったんだけど、こいつは逃げ足が遅くてつかまえられたんだ。猫を投げると面白いよな」
「きみらは高校生? 生き物で遊ぶ年じゃないだろ。やめてやってくれよな」
「そう言われるとやりたくなるんだよな。俺がつかまえたんだから返せよ」

 大柄な少年は、幸生が抱いている猫を難なく奪い取って放り投げた。猫はおぎゃーっ、というような声を上げて宙を飛び、女の子がキャッチしようとした腕にはおさまらずに、くるりと回転して地面に着地した。

そのまま猫は脱兎のごとく逃げていく、猫なのにウサギとはこれいかに、と俺が首をかしげていると、どこからかまたしても猫の声が聞こえた。

「……母ちゃんがいるんだよ。あいつを呼んでるんだ。ちび、走れ。逃げろ。兄弟も待ってるぞっ」
「なーにムキになってるんだか。猫なんかで……」
 ぶすくれた女の子が言い、男の子は幸生の胸倉をつかまえた。

「あんたが邪魔するから逃げられちまったじゃないかよ。どうしてくれるんだよ」
「猫で遊ばなくても、きみたちは恋人同士でしょ」
「恋人なんかじゃないよ。そんなことはどうでもいいだろ。こいつは俺が動けなくしておくから、つかまえてこいよ」

 男の子が女の子に言い、女の子はうなずいて走り出した。真っ黒な猫の親子は樹の上にいる。女の子が手を伸ばすと、母ちゃんであるらしき大人の猫が、しゃーっ!! と吠えて彼女の手にパンチを食らわした。

「いったーい!! なに、こいつ、猫のくせに生意気っ!! あったま来た。待てっ!!」
「野良猫が人間ごときにつかまるかよ。お嬢さん、やめたほうがいいよ。猫を甘く見ると化けて出てくるかもしれない。しっぽの先が七つに分かれた化け猫に、頭からばりばり食われちゃうよ。化け猫は変身するんだから、巨大な猫に襲われたらひとたまりもないんだからね」

 胸倉をつかまれたままの幸生は、慌てず騒がずおどろおどろしい声で言っている。気色の悪い声を出すなっ、とわめいて、男の子が幸生を突き飛ばした。幸生は地面にすわり込み、俺がはじめて見るような険しい表情で少年を睨み上げた。

少年は意味不明の雄たけびを発して幸生を蹴ろうとした。そのときようやく、俺も動き出した。

「やめろよ。猫ごときで喧嘩すんなって」
「猫ごときでムキになってんのはこいつじゃねえかよ」
「けど、きみもよくないだろ。ほら、むこうでは彼女が猫と追いかけっこしてるよ。猫の母ちゃんは怒ってるよ。ひっかかれるんじゃないのか」
「彼女を救出するのが先じゃないの?」

 幸生も言い、男の子は舌打ちして走り出した。
 立ち上がらない幸生とふたりで眺めていると、猫の母ちゃんは右に左にと駆け回り、手近の樹に駆け上っていって、人間どもを小馬鹿にしているかのごとく、嘲笑的な鳴き声を立てた。続いて子猫たちも樹に登っていって、幼い声と貫禄のある声が六つの、猫のコーラスが響いた。

「あれ、母ちゃんなんだろ。父ちゃんじゃないんだよな」
 尋ねたら、さすがに猫には詳しい幸生が教えてくれた。

「猫の父ちゃんはおまえ以上に無責任だから、シーズンになったら女漁りして、女の取り合いしてオス同士で喧嘩して、勝ったら女を手に入れる。そんですっきりしたら旅に出る。女とやるだけやって孕ませておいて知らん顔して、またまた旅先で女の取り合いして喧嘩してるんだよ」

「おまえ以上にってのはよけいだけど、いいかもな、そんなのも」
「喧嘩に強くないと生きていけないんだぜ、猫のオスは」
「そんなら人間のほうがいいか」

 呑気な会話をしているうちに、樹上の猫たちに罵言を浴びせていた少年少女は、飽きてきたらしくて立ち去っていった。こっちに戻ってこなくてよかったな、と呟くと、幸生は言った。

「子猫っていっても赤ん坊でもなかったから、キャッチキャットされても内臓破裂とまでは行かなかったんだな。まずはよかったよ。おーい、ちび、二度と人間なんかにつかまるなよ」

「キャッチキャットか……赤ん坊じゃないってわかるのか?」
「見たらわかるよ。生後半年近いってところかな。な、キャットママ? よくぞここまで子供たちを育てたね。そろそろ乳離れ?狩りの訓練もしてるの? おまえたちには生きにくい世の中だろうけど、これからもがんばれよ」
 樹上の母親猫が、うにゃっと鳴いた。幸生の言葉に返事をしているようだった。

「猫の狩りの訓練ってどうやるの? 見せてよ」
「え? お、おい、幸生……あいつ、日本語がわかるのか」
「長年人間社会で暮らしてるんだから、ニュアンスはわかるんじゃないかな」

 幸生は泰然としているのだが、俺にはおとぎ話のように見えた。母猫が子猫たちを従えて、樹から降りてきたのだ。夜の公園に横一列に子猫たちが並ぶ。母猫がなにやら言い聞かせているように見える。端っこのちびが列からそれそうになって、母ちゃんに頭を殴られていた。

「化け猫じゃねえのかよ、あの母ちゃんは」
「だとしたらめったと見られない見ものじゃん。章、おとなしく見てろよ」
「不気味じゃないか」
「楽しいよ。わくわくするじゃん」

 母猫が身を低くする。都会でもあり冬でもあり夜でもあるのだから、獲物なんているのだろうか。鳥か、虫か、ネズミか。猫の視線の先に目を凝らすと、なにかが動いていた。我知らず息を呑んで見つめていると、母猫が跳躍した。夜を跳ぶ黒っぽい猫の姿は、一種あやかしめいていて、それでいて美しくも見えた。

 獲物はイタチ? イタチは猫と変わらない大きさのはずだから、イタチの子なのだろうか。母猫が得物をとらえ、半殺しにしたあたりで子供たちを呼んだ。子供たちは一斉に得物を取り囲み、いたぶって遊んでいるようにも見える。まるでここはアフリカの草原で、小型のライオンたちが狩りをしているかのような、そんな錯覚も起きていた。

「小規模だけど自然のドラマだな」
「幸生は……あんなの、よく見るのか」
「はじめて見たよ。これってさしずめ、子供を助けてくれた人間に対する猫の恩返しだったりして」
「残酷だけどさ……」

「猫はちっちゃな野獣だよ。まして野良だよ。ああしないと生きていけないんだから」
「うん、残酷だけど……どことなく美しい気もするよ」
「猫は可愛くて、俺をめろめろにしちゃってさ、そのくせ野獣なんだ。残酷なんだ。なにかに似てるだろ」
「人間の女?」

「そうは言ってないよ。章、見ろよ」
「見てるよ。おいおい、嘘だろ」

 狩りをすませて食事もすませた猫たちが、ぞろぞろと樹に登っていった。高みに勢ぞろいした猫たちのシルエットが、月明かりに浮かび上がる。親子猫は声をそろえて、うにゃわわーっ、と鳴いた。俺にはその声が、ベートーベンの「運命」のしょっぱなに聞こえた。

「どういたしましてーっ。さ、章、帰ろう」
「あいつら、おまえにありがとうって言ったのか」
「そう解釈しておきましょうよ。いやぁ、いいものを見せてもらった」
「おまえも化け人間か」
「化け猫の化身かもよ」

「……真実味があるからやめてくれ」
「怖がりね、章ちゃんったら」
「その口調もやめろっ」

 月明かりに照らされて、にやりとする幸生の口の中に長い牙でも見えたらどうしよう。想像するとぞくぞくっとする。思わず我が身を抱きしめたら、幸生が大口を開けて笑った。たしかめたくはなかったのだがたしかめてみたら、口の中に牙はなくて、俺は心底安心したのだった。

 それにしてもそれにしても、幸生は得体の知れぬ奴だとは前々から思っていたけれど、これでいっそう認識を深めた。猫となるとムキになって、猫に恩返しなんかされちゃって、こいつはいったいなにものだ? と見返すと、澄まして口笛を吹いている。幸生の口笛が奏でる曲は、「黒猫のタンゴ」であった。


END


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いいわけ

「茜いろの森」で連載しているフォレストシンガーズストーリィのひとつ、短くてファンタジックなものを、と考えて、こっちに持ってきてみました。
私の頭の中は今はフォレストシンガーズしていますので、こんなものしか書けません。
ファンタジックでもないのですけど、いかがでしょうね。

ご感想、お待ちしています。
「茜いろの森」もよろしく。

http://quianred.blog99.fc2.com/

こっちにはフォレストシンガーズストーリィも、その他の小説もいっぱいあります。
「リカ」が主人公の「潮騒」なんていうのもあります。

「祝!!ろうそく」2011/07/27 19:15

「祝!!ろうそく」
                         空白 藍

ろうそくの森のブログができた・・・って、禅院さんから、メールをもらったときは、素直に嬉しかった(ノ^∇^)ノ♪♪

なに書こうかな~?
ん・・・待てよ・・・私には、今しなくてはいけないことが・・・|||/( ̄ロ ̄;)\| NOッ!!

まっ・・・良いか・・・

ということで、原稿を書きましたが・・・ここで、もうひとつ問題発生。

昔は、編集会議があって、(特に私の)人さんの前に出してはいけない原稿は、お兄さん、お姉さん方が、優しくボツにしてくださった・・・今回はID&パスワードをいただいて、自己責任ですか???

まぁ、確かに、あの頃はJKだった私も、りっぱなおばさんだけど・・・

というわけで、書いた原稿は、尊敬する茜さんと昔から優しい禅院さんにメールしてからUPします。(事後承諾ですが・・・)
よ(^○^)ろ(^○^)し(^―^)く(^○^)ぺこm(_ _)m


思い出したんだよねぇ~
昔、自信を持って出した原稿を、如月さん(禅院さんの前の代表)に
「あれは、禅院やから載せたけど、俺やったらボツや~」
って言われたこと・・・

それから、自分のPNを忘れた、お髭で素敵になったおじさん・・・
PNは「雅~みやび~」だったんじゃないですか~?
私以上に、真面目に活動されていませんでしたけど・・・♪ (* ̄― ̄)v

皆様、これからも、よろしくお願いしま~す(⌒^⌒)b♪♪

小説(HENGE)2011/07/28 15:30

小説
   
       津々井 茜

「HENGE」


 ふっと気がついたとしか言いようのないシチュエーションで、俺は夜の戸外にいた。あれぇ? と口に出したつもりだったのだが、その声は、にやごっ、だった。

「うにゃご? 俺が猫になってるの?」

 おのれの姿を確認してみると、小型の豹のような精悍な体躯の、しっぽの長い若いオス猫だ。推定年齢四歳ってところか。人間の俺の年齢から逆算すると、猫としたらそんなものだ。計算は苦手だが、猫の年齢だったら即座に暗算できる。

 茶色と黒の縞のオス猫。身体は大きくはないようだが、敏捷そうな筋肉に覆われている。ためしに塀の上に飛び上がったら、一瞬でジャンプできた。

「おー、これは楽しいじゃん」

 わくわく、わくわく。塀の上を歩いていくと、行く手に俺を睨んでいる巨大な猫がいた。猫の俺よりもふた回りは大きくて、でっぷりした野良ボスオスか。言葉は通じるのかと話しかけてみた。

「こんばんは、いいお天気ですね」
「おまえはどこから来た? ここはワシの縄張りじゃ」

 人間にはうにゃらごにゃーごとしか聞こえないのだろうが、俺にはボスの言葉は理解できる。ボスにも通じている様子だった。

「いえね、俺は新参者なんですよ。よそから迷い込んできたんです。ボスの子分にしてもらえませんか」
「気に入らんな。よそ者は出ていけ」
「行くところがないんだから、ちょっとだけいさせて下さいよ」
「駄目だ。出ていけ」

 大きな身体の毛を逆立てて、ボスが俺を威嚇している。喧嘩を売られているようだが、こんな奴と闘っても勝ち目はないに決まっているので、俺は逃げ出した。

「どこかに行きますから、怒らないで」
 
 ふーはー言って興奮しているボスの前から逃げ出して歩いていくと、色っぽい年増美女がいた。むろん猫ではあるのだが、俺も猫なのだから、猫の美女は人間のときにも増して大好きだ。

「俺、ユキっていうんだ。どう?」

 猫はこれだけで口説けて楽でいいよな、と思いつつも、お姉さん、俺と遊ぼうよ、と迫った。彼女もその気であったようだが、耳をぴくつかせて言った。

「あたしを狙ってる奴が来るよ。あいつと喧嘩して勝ったら遊んであげる」
「どんな奴? うげ、でか」
「あんたが小さくて細すぎるんじゃないの? ちゃんと食べてないの?」
「食べてないのかもね」

 ボスの前から逃げて逆方向へと走っていった先に、美女猫がいたのだ。そのむこうからのしのしと歩いてくるのは、ボスよりは小さいものの、大型で太り気味の獰猛そうなオス猫だった。

「負けそうだから逃げるよ」
「そのほうがよさそうだね。じゃあね」

 塀から飛び降りて逃げていって、見つけた柿の木に上っていった。人間社会を高みの見物としゃれこもうとしていたのに、またしても猫があらわれた。またしてもオスだ。

「おまえ、どこから来たんだ?」
「よそ者ですけど、なんにもしてないでしょ。ここにいるだけだったらいいじゃん」
「ここは俺の縄張りだ。出ていけ」
「仲良くここにいましょうよ」
「やるのか、てめぇ?」
「やりません……はい、ごめんなさい」

 猫のオスはちっとも楽ではない。知ってはいたが痛感して、柿の木からその家の庭に飛び降りようとしていたら、人間が顔を出した。

「そこの猫ども、やかましいっ!!」

 どこかのじいさんに怒鳴られて、水をかけられた。はずみで柿の木から落ちそうになって、必死になって走って逃げた。

 ここは俺のマンションの近くの住宅街か。俺はマンションの部屋で眠っていて夢を見ているのか。猫になる前の記憶が抜け落ちているのだが、たぶんそうだったはずだ。猫には持久力がないので、喧嘩を売られたり美女を口説こうとしたり、逃げたり木登りしたりして疲れてきた。

 そろそろ目が覚めないだろうか。DVDで映画を見ているように、続きはまた今度、ってできたらいいのにな。そう考えながらも別の塀に飛び上がって歩いていると、またまたまたまた猫に出くわした。人間でいればこんなに猫には会わない。この街にこうも猫がいるとも知らなかった。

 夢だからなのか、猫同士だからキャッチするのか。今度の猫もオスで、牙を剥いて俺を睨みつけている。こいつは小型だ。猫のオスになったのだから、俺も喧嘩でもしてみようかとその気になったのが悪かった。

 ただでさえ持久力が不足してきているところへもってきて、急造オス猫は喧嘩の経験がまったくない。飛びかかったら押さえ込まれて、首筋を噛まれて塀の上から落っこちた。

「うぎゃおーっ!!」
「うわーっと。なんだなんだっ!! 猫?」
「ほぎゃにゃご?」

 この声は……章? 俺は章の腕の中へと墜落したのだが、章は厭わしいものでも振り払うように、俺を道に放り投げた。

「まあね、でもね、おまえのおかげで助かったよ」
「……んん? 幸生? 猫じゃなかったのか? 猫だったはず……錯覚か。猫が空から降ってきて、幸生に変身した? ちがうよな。猫と幸生は別だよ。なにやってんだよ、こんなところでおまえはよぉ」
「……んん?」
「なにをすっとぼけてんだよ」

 二度目にふっと気がついた。俺は人間の幸生に戻っていたのだった。

「章……こんなところでナンパでもしてるのか」
「猫だったらナンパには最適かもしれないけど、俺は人間だから夜中の住宅街でナンパなんかしねえんだよ。おまえんちに遊びにいこうとして、そこのコンビニでビールを買って、近いから歩いていくつもりだったんだ」

 夢ではなかったのか。
 なんにしたって、章のおかげであの猫に重傷を負わされるのは免れた。このあたりは猫ナンパには最適な場所だとも知れたから、猫美女を探しがてらに近いうちに散歩にこよう。人間でいても猫美女に会えるだろうし、猫のオスは人間のオスには喧嘩は売ってこないだろうし。

「幸生、首筋に噛み跡みたいのが……」

 章が言って、俺の襟足を覗き込んだ。さっき、猫に噛まれた跡? やはりあれは夢ではなかった?そう思うと、首筋が痛いというよりもそくそくっとしたのだが、猫がらみの魔術は俺は大好きなのだから、こんなこともあってもいいさ、の気分だった。


END


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いいわけ

発表の場が増えると嬉しくて、またアップしてしまいました。
すみません。

猫小説NO2。登場人物は「黒猫のタンゴ」にも出てきた、幸生と章です。
これは「茜いろの森」の短編の一部でして、興味を持って下さった方、全部読みたい、と言って下さる方はこちらをどうぞ。

http://quianred.blog99.fc2.com/blog-entry-361.html

「夜の魔術」です。